呉は私のふるさとだ。このところ訪れる機会がほとんどなくなったが、
就職で広島に住むようになるまで、23年間暮らした。ということは、
広島暮らしの方が長くなった計算になるが、それでも自分は呉の人間
だという意識が残っている。呉は人口21万人、北にそびえる灰が峰
(737m)をはじめとして、3方を山で囲まれて平地部は狭い。山
のすそ野の尾根まで市街地が広がり、1種独特の景観をなしている。
明治22年に呉鎮守府が開かれて後、海軍の町として栄えた。さらに
明治36年に設立された呉海軍工廠では戦艦大和や長門等わが国を代
表する軍艦が次々と造船され、戦後はこの技術を受け継いで造船業や
機械工業が発展した。呉の町を南北に走る本通りから北を見れば灰が
峰が望まれ、南には造船所のクレーンが見える。呉の自然と歴史を象
徴する眺めだと思う。
いつかは、と思いながら何もしてこなかったが、いよいよ、という気
持ちで呉を歩くことにした。そう、思い出しながら、新しい発見をし
ながら、何回かに分けて私のふるさとを歩きたい。