地球が舞台

2008年8月
フィリピン ゴミの山の学校
「パアララン・パンタオ」(思いやりの学校)ニュース

☆6月、新学期が始まりました。268名登録。

(パヤタス校)

 5歳から12歳の101人が通ってきます。午前中は5歳から6歳の2クラス(50人)午後は6歳から12歳の2クラス(51人)があります。
 ジェーン先生とマリベル先生が担当します。メイ先生(シンガポールの支援グループ Mission Youth from Singapore ACTS29 のメンバー)がコーディネーターとして、生徒たちの問題や外部機関との連絡などを担当しています。レイエス校長が、パヤタス・エラプ両校の全体をみています。

 マリベル先生は、パアララン・パンタオの卒業生です。子どものころ6年間パアララン・パンタオで学び、編入試験を受けてハイスクールに進学。卒業後、一時働きましたが、パアララン・パンタオの奨学金で大学に進学、この3月に卒業、パアララン・パンタオの先生になりました。

(エラプ校)

 4歳半から12歳までの167人が通ってきます。
 午前中は4歳半から5歳の3クラス、5歳から6歳の1クラス、7歳以上の1クラスの計5クラス。
 午後も、4歳半から5歳の3クラス、5歳から6歳の1クラス、7歳以上の1クラスの計5クラスがあります。
 ベイビー先生、リチャード先生、ユージン先生、メイクル先生、シンディ先生が担当します。

給食もあります。

 シンガポールのグループ Mission Youth from Singapore ACTS29 の支援。パヤタス校の給食は、ダイダイさん、エラブ校はレイレさんがつくってくれています。

  
        はみがき(パヤタス校)                    エラプ校・非常階段もつきました。


パアララン・パンタオ・パヤタス校


パヤタス校で


エラプ校3階・学芸会の練習

☆奨学生ニュース

 みなさんに応援していただきました、大学生2人、専門学校生1人が、卒業しました。
 ユージン・ロトル(Eugene Rotol 24歳)さんは、犯罪心理学を専攻、民間の警備の仕事をしています。
 マリベル・ガレロ(Maribel Galero 25歳)さんは、パアララン・パンタオの先生になりました。
 エレインジョイ・レイエス(Ma.Elaine Joy Reyes 22歳)さんは、医療事務を学び、就職活動中です。

 「私は今パアララン・パンタオで教えています。パアララン・パンタオは、この地域の貧しい子どもたちのためにとても大切な学校です。私もパアララン・パンタオで学びました。そして、ここまで歩んでこられたことを、とても幸せに思っています。生徒たちには、ここでしっかり勉強してもらって、自分の道を見つけてほしい。」マリベル・ガレロさん。

今年度の奨学生

 ご理解ご支援をよろしくお願いいたします。

 大学生(2名) (スイスのグループAlban Memorial Foundationの支援)

マリッサ・モロン Marissa Molon(20歳)
 パマンタサン大学モンタルバン校、ビジネス教育。4年生。

リオ・エヴァンジェリスタ Rio V Evangerista(25歳)
 パマンタサン大学モンタルバン校、ホテル経営学。4年生。

 高校生(2名)

ジョシエル・カニエタ Jociel Caneta
 (18歳) 3年生。

ロレイン・バンズエラ Ma.Louraine Banzuela
 (17歳) 1年生。

 そのほかに、シンガポールのグループの支援で、7歳から11歳の8人の生徒が、公立小学校に通うことになりました。

 公立小学校に入学するには、出生証明書が必要です。出生証明の申請の手続きはパアララン・パンタオがサポートしています。いろんな事情で証明書を取得できない生徒も複数名いますが、小学校の校長先生の配慮で、証明書がなくても通学を許可されました。

 
ユージン・ロトル          マリベル・ガレロ


マッリサ・モロン

 
リオ・エヴァンジェリスタ      エレインジョイ・レイエス

 
ジョシエル・カニエタ        ロレイン・バンズエラ

☆子どもたちに聞いてみました。「どんなときが幸せですか?」

 「学校で勉強しているとき」(エラプ校、女子)
 「学校。ともだちがたくさんいるから」(エラプ校、女子)
 「ママといるとき」(エラプ校、男子)
 「学校が終わってママが迎えに来てくれるとき」(エラプ校、男子)
    ママが好きと答えた男の子たちはまだ5歳か6歳くらいでした。
 「クリスマスが好き。おもちゃをもらえるから」(パヤタス校、6歳女子)
 「おとうさんとおかあさんがいるから、しあわせ」(パヤタス校、6歳女子)
 「ここで勉強できることが幸せ。貧しいけど勉強できること」(パヤタス校、12歳女子)

☆「パアララン・パンタオの教育方針」(注1)

 「私たちは、私たちが子どもたちのために、子どもたちに対して、そして子どもたちと一緒に何をするかが、私たちの人間性(思いやり)の質を明らかにすると信じています。子どもたちが今日、どのようであるかは、未来を予見するものです。」―パアララン・パンタオ創立者 レティシア・レイエス(注2)
 「この世界が、子どもたちが自由に健やかに育つことができる場所になるように、という願いのもとに私たちは団結しましょう」―ある歌からの引用
 パアララン・パンタオ(思いやりの学校)は、1992年(注3)に、ゴミ捨て場隣人組合(注4)と、チルドレンズ・ラボ(演劇を通して子どもの教育の可能性を探る実験室)(注5)の支援によって設立されました。この学校は、子どもたちに、無償のノンフォーマル教育(政府からの支援ではない教育)を提供しています。
 その設立から一貫して、パアララン・パンタオは、子どもたちに、自分自身と、自分たちを取り巻く社会に対して目を開かせることに尽力してきました。また、子どもたちが、自分自身の能力を向上させ、また公教育への進学の準備をさせるために、パアララン・パンタオは、彼らが正しい教育を受ける権利を保障しています。
 パアララン・パンタオの教育プロジェクトを通して、子どもたちは、希望をもって、未来への一歩を歩めるようになりました。これから先も、困難なことが待ち受けているでしょう。しかし、パヤタスの子どもたちの未来は、以前よりもさらに明るく輝いています。

(注1)今年の2月に、レイエス先生とスタッフやボランティアのメンバーで、学校の理念をまとめて、壁にかけました。
(注2)アジア人権賞(2007年受賞)のレイエス先生の受賞スピーチから。
(注3)学校は1989年に開校していますが、母体であるゴミ捨て場隣人組合が当局に登録されたのが1992年であることから、92年を正式開校とする、ということです。
(注4)地域の住民組織  (注5)フィリピン国内の教育NGO

  
左からレイエス校長先生、マリベル先生、ジェーン先生

☆ゴミ山事情

 パヤタス校の旧校舎があったところは、すでに埋められています。跡地に建っているのは、ゴミのなかから発生するメタンガスを集めて電気に変える設備だそうです。現在その電気を使って、試験的にゴミ山の常夜灯を点灯させているそうです。
 現在の校舎の裏は崖になっており、崖下の道をゴミ収集のトラックが通っていきます。道の向こうはゴミが積み上げられてできた山ですが、草も茂って本物の山のように見えます。
 悪臭はありません。いまのところ学校から離れた場所にゴミが捨てられているからだと思います。
 現在ゴミ山へは、スカベンジャー(ごみ拾いをする人たち)の組合に所属し、許可された人しか立ち入りできません。14歳未満の子どもの立ち入り、労働も禁止されています。


パヤタス校旧校舎跡。奥に見えるのは発電設備

 
左・ゴミの山とふもとの生徒の家  右・パヤタス校(新校舎)の裏の道を通るごみ収集のトラック

☆生徒数の増加と、物価高騰について

 フィリピンは現在、主食である米と、ジープニー(乗合ジープ)の値上がりが激しいです。米の価格は去年の約2倍。米とジープニーの値上がりは、貧困世帯を直撃しています。
 ジープニー代が工面できず、公立小学校に通うのが困難になった生徒が、パアララン・パンタオに通うようになったり、他のフリースクールに通っていたが、テキスト代が払えず、パアララン・パンタオへ移ってきているケースもあります。去年より両校で70名あまり生徒が増えています。希望者は多数ですが、受け入れは限界です。
 先生の給料も非常に安く改善を検討しておりますが、予算的に厳しく今年は据え置きとなりそうです。みなさまのいっそうのご支援を、心よりお願い申し上げます。


授業風景・エラプ校で


パヤタス校


エラプ校


左からベイビー先生、リチャード先生、ユージン先生、メイクル先生、シンディ先生


メイ先生(右)

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