地球が舞台

2009年9月
フィリピン ゴミの山の学校
「パアララン・パンタオ」(思いやりの学校)ニュース

☆6月、新学期が始まりました。317名登録。

(パヤタス校)

 110名が登録しました。
 午前中(7時半〜11時半)は5歳児の2クラス(計54名)があります。
 午後(1時〜4時半)は6〜7歳児のクラス(29名)と7〜15歳のクラス(27名)があります。ジェーン先生とマリアペレ先生が担当。レイエス校長がサポートしています。

 (昨年いたマリベル先生は出産のため退職。マリアペレ先生は以前アシスタントの先生をしていました。その後パヤタスを離れていましたが、今年から復職。)

 授業内容は、小学校入学に向けた基礎教育です。
 午後の7歳〜15歳のクラスは、基礎教育に加えて、個別の能力に応じた学習です。

(エラプ校)

 207名が登録しました。
 先生は5人。ベイビー先生(エラプ校の責任者)、シンディ先生、メイクル先生、マリクルス先生、リア先生です。
 午前中(7時半〜11時半)は5歳児の5クラス(各クラス20〜25名)があります。
 午後(1時〜4時半)は5〜7歳児の5クラス(各クラス20〜23名)があります。
 授業内容はパヤタス校と同じです。
 コーディネーターのメイ先生が、生徒達の問題への対応や外部機関との折衝を担当。小学校入学に必要な出生証明の手続きもしています。

給食も毎日あります。

 パヤタス校は、シンガポールのグループの支援。エラプ校は、今年からスイスのグループの支援です。パヤタス校はお手伝いのダイダイさんと奨学生のロザリンさんが担当。エラブ校は近所に住むレイレさんが担当します。

  
  給食(パヤタス校)            歯みがき(パヤタス校)


パアララン・パンタオ・パヤタス校


パヤタス校で


ベイビー先生のクラス(エラプ校)

☆奨学生ニュース

 今年度は下記の奨学生を支援します。よろしくお願いいたします。

 高校生(3名)

ジョシエル・カニエタ Jociel Caneta (19歳) 3年生。個人の支援
ロレイン・バンズエラ Ma.Louraine Banzuela (18歳) 2年生。
ロザリン・ベレザ Rocelyn Belleza (15歳) 1年生。
 (ロザリンは、ビコール州出身。8人きょうだいの長女。今年からパアララン・パンタオで住み込みのお手伝いをしながら、高校に通うことになりました。)

 小学生(6名)

 シンガポールのグループの支援で、小学生6名の就学を支援します。

 去年まで、みなさんに応援していただきました大学生2名(マリッサさん、リオさん)は卒業し、それぞれ仕事を見つけて働いています。ありがとうございました。

  
ジョシエル・カニエタ      ロレイン・バンズエラ      ロザリン・ベレザ

☆パアララン・パンタオの幼児教育

 レティ先生にインタビューしました。(2009年8月6日)

──まず、パヤタスのような貧困地域で、子どもが学校に行けない、あるいはドロップアウトしやすい理由は何か。

●親が教育に関心がない。自分も教育を受けていないので、子どもに教育が必要と思わない。
 たとえば、マリアペレ先生が欠席した子の家を家庭訪問して、なぜ学校に来ないかを親に聞くと「行きたくないんだろ」と答え、親はギャンブルを続けていた。たとえ子どもが学校に行きたいと思っても、日常的に親が、学校行くより仕事しろ、という価値観を押しつけてくると、学校に行きづらくなる。
 小学校に行くのに必要な文具などの出費はそんなに高くない。ここの人たちにとっても無理のある金額ではないが、親に理解がないと買ってもらえない。パアラランでは生徒に鉛筆やノートやカバンを支給したが、もらうものだけもらって来なくなる生徒もいる。今度、本をあげたいと思っているが、それは全員ではなく、がんばっている子をみきわめてあげようと思う。

●かつて、ここの子どもたちが学校に行けない最大の理由のひとつだった出生証明の問題は、いまは解決している。以前は出生証明の申請に1500ペソ必要で、そのお金が工面できないケースが多かったが、現在は無料になった。出世証明の手続きはコーディネーターのメイがしている。現在も何人か手続きしている途中。

●一般的な問題は、言語の問題。地域部族の言語は140ほどもあって、タガログ語が母語じゃない子も多い。デイケアで、アルファベットを認識する能力がないと、小学校でついていけなくなる。
(注:フィリピンの2002年の統計で、小学校2年でのドロップアウト率は15%にのぼる。小学校3年から、数学、理科、社会などの科目が英語で行われるかららしい。母語での教育は今後の課題。)

──学校に行けない子のためのサポートはあるか。

●この地域でも、ドロップアウトした子のためのサポートはないわけじゃない。物質的なサポート、交通費の支給などのサポートをしているところもある。だが、なぜ学校に行くのか、というモラルサポートはない。あるクリスチャンの組織では、サポートを受けるためには、毎週のミサに親が出席しなければならない。親がそれを嫌えばサポートは受けられない。

●パアララン・パンタオでは、まず家庭訪問して、学校に来ない理由を把握する。病気などの特別な状況のサポートも、薬を手配するなど個別に対応している。たとえば、去年母が死んで両親とも失ったN(11歳)については、小学校へ通う奨学金だけでなく、拾い食いをせずにすむように、姉たちに料理を教えたり、簡単な仕事を与えるなど、生活の支援も行っている。また、小学校へ進学後、勉強についていけない子、家庭の事情で学校をやめた子は、ここで学びなおすことができる。

──パアララン・パンタオが、幼児教育に力を入れている理由、またその教育内容はどのようなものか。

●パアララン・パンタオでは主に小学校入学前の教育を行っている。家庭での教育を期待できない環境にいる子どもたちが、小学校に行くまでに習得必要な学習内容は、けっこう多い。まず基本的な準備──鉛筆の持ち方、机に向かう、先生の話を聞く、先生に尊敬語を使える、ともだちと仲良くする。歯磨きや食事のマナー、身だしなみ。さらに小学校での学習内容がアカデミックになっても対応できる教育を行っている。アルファベット、数字や図形、色や物の名前、タガログ語の単語、英語の単語、社会科や理科の基礎。年間のカリキュラムに沿って学ぶ。カリキュラムと教師の指導は、開校時から、フィリピンの教育NGO「チルドレンズ・ラブ」が提供してくれている。ストリートチルドレンの教育に携わる実績のあるNGOだ(非常にユニークなカリキュラムなので次ページに紹介します)。
 基礎教育がしっかりしていれば、小学校に行ってもドロップアウトせずに6年間通える。パアララン・パンタオから小学校にすすんだ子どもの多くが6年間通うことができている。

●現在では、公立の小学校でも、パアララン・パンタオの生徒の優秀さは認識されている。親たちからも「ありがとう。うちの子どもは、小学校に行ってもいい成績で楽しく勉強を続けています」と感謝されている。小学校卒業後、進学するかしないかは、親の理解や金銭的な事情で異なる。

●学習内容は、無理のないように少しずつ進めるが、ここで一年間勉強したら、小学校1年の段階で必要なレベルは身に付けられる。もうすこしサポートが必要と思われた子には、もう1年、ここで勉強することをすすめている。ドロップアウトした子が、ここで学びなおすこともある(午後のクラスには、虚弱体質や弱視、また知的な遅れを含む発達障害などのために小学校の勉強についていけなかった子、障害児の学校に行ったものの本人の症状が軽度障害なためにかえって孤独になってしまった子、親の死などで小学校を中退したままだった10代の少年たちが、それぞれの能力に応じた学習をしている)。

●親たちには、子どもが5歳になったら、ここで勉強させるように啓蒙している。5歳なら、1年間で覚えられることも、10歳や15歳になると、3年もかかってしまう。5歳からはじめたい。

(インタビューを終えて:学校は、子どもたちが尊厳を与えられる場所である、というのが、レティ先生の信念です。もっとも教育に恵まれずにいた地域に、その土地の人々の情熱で、すぐれた幼児教育、特別支援教育が実践されていることにあらためて感動させられました。パアララン・パンタオは、ゴミ山以外の社会を知らないシャイな子どもたちに、その後の学習の基礎になる、学ぶ喜び、学びへの自信と積極性を与えています。)


レティシア・B・レイエス校長

☆ダンプサイト事情

 現在、パヤタスのゴミ山には勝手にはのぼれず、チェックポイントで管理者の許可をもらってからのぼる。ゴミの山はふたつの大きなゴミ山がつながっている形だが、以前、大きな崩落事故も起こした片方の山は、いまゴミは捨てられておらず、緑化をすすめていて、のぼると造成中の公園といった感じだ。パアララン・パンタオ(パヤタス校)の2008年度の修了式は、4月のはじめに、このダンプサイトの公園でおこなった。
 もう一方のゴミの山はとても大きくなり、山の上では人々がゴミを拾って働いている。麓のパヤタス校の旧校舎があったところは、大きな施設ができている。ゴミのなかのメタンガスを電気に変える設備だという。
 14歳以下の子どもたちの労働は禁じられているが、禁じられたら困る子どもたちもたくさんいる。夜こっそりのぼってゴミ拾いする。あるいはゴミのトラックにのぼって、トラックの上でゴミを漁ったり、トラックが道に落としていったゴミを拾って歩く。あるいはジャンクショップで、ゴミの仕分けの仕事をする。麓の路上で、どしゃぶりの雨のなか、袋を引きずって道のゴミを拾って働く子どもたちの姿を見かけた。


'08年度パヤタス校の終了式(09年4月)


ゴミの山


ゴミの山で働く人々

アートクラス(パヤタス校)


シンディ先生のクラス(エラプ校)


エラプ校


図形の学習(パヤタス校)


ジェーン先生(パヤタス校)


リア先生(エラプ校)

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