【天然記念物】

燈明杉
【燈明杉】
市指定天然記念物
●所在地:安佐北区可部町綾が谷251福王寺境内
●指定年月日:昭和48年5月30日
●概要:樹高23〜40m 胸高幹囲3.10〜5.02m

   可部の福王寺山の間を縫うように走る中国自然遊歩道を一時間も登ると、やがて福王寺の山門にたどり着きます。
 これをくぐって石段を上がると4本の杉の木が見えてきます。大人が数人かかってとっと抱えられるほどの大杉が、ずらりと並んでそびえ立つ様は、見る人を圧倒します。
   かつては5本並んだ燈明杉として知られていましたが、昭和57年に真中の1本が枯れて伐採されたため4本になりました。その4本のうち、山門に近い2本には落雷による焦げ跡が上から下へと走っていますが、どの木も樹勢は旺盛です。昭和48年の調査では胸高幹因が310〜502cmだったものが、現在は387〜522cmに増えており、まだまだ成長し続けていることがわかります。
 『陰徳太平記』によると、福王寺は天長5年(829)に空海が開基したとされていますが、この杉がいつ植えられたものか、なぜ燈明杉と呼ばれるのかについては伝えられていません。ただ、江戸時代の地誌『芸藩通志』には「燈明杉」の名が記されており、すでにその時代には巨樹の風格を備えていたことをうかがわせます。


カヤ
【カヤ】
市指定天然記念物
●所在地:安佐北区可部町上原登竜428−2
●指定年月日:昭和48年5月30日
●概要:樹高約16m 根廻り4.01m

   安佐北区の鬼ケ城山西側斜面に広がるヒノキ林の奥深く渓流のほとりに大きなカヤの木があります。根元はヤブニッケイの低木とぴったりくっついており、幹の上にはヤブツバキ、カズラ、フジなどの着生植物も見られます。
 この木の正確な樹齢はよくわかりませんが、文政2年(1819)に藩に提出された報告書に、すでに可部地方の巨木として載せられているのでかなりの老木と思われます。また樹幹には「山の神」と書かれた木札が掛けてあります。これは神が地上に降り立つ時の「依り代」であるとして、この木を信仰していた昔の人々が与えた名前でしょう。渓流に洗われながらも力強く根を張って立つ姿は、まさにその名にふさわしいものです。
 カヤは広く日本全域に分布し、材質が緻密で美しいことから、上質の木材として将棋盤などによく使われる木です。成長は大変遅いのですが、まれに樹高25m、胸高幹囲で直径2mに達することもあります。このことからこのカヤは、ほとんどその極限近くまで生育しているとも言えそうです。


オオツクバネガシ
【峠八幡宮のオオツクバネガシ】
市指定天然記念物
●所在地:安佐北区可部町大林上草田506 峠八幡宮境内
●指定年月日:昭和51年5月17日
●概要:樹高約22m、目通り幹囲4.45m、枝張・西5m 南8m 北9m

   峠八幡宮は、白木山のふところに抱かれた戸数十数軒という小さな集落の鎮守社です。
 小さな拝殿、本殿のある境内のまわりには、オオツクバネガシ、タブノキ、ヤブツバキなどの常緑広葉樹が茂り、その中でもひときわ大きなこのオオツクバネガシが目を引きます。
   
太い幹は地上から2〜3mで大きく2本に分かれ、さらに上にいくに従って枝分かれを繰り返し、見事な樹形を作っています。また、根元から枝分かれした部分の少し上あたりにまで達する大きな割れ目や太い幹にツタやカズラを這わせた様が、古木の風格を感じさせます。
 ツクバネガシは県内各地に割合多く見られますが、オオツクバネガシは分布域が狭く、珍しい種類です。また葉の形などがアカガシとツクバネガシの中間的な姿を備えていることなどから、両種の雑種と見られています。
   県内一のツクバネガシは佐伯郡佐伯町の速谷神社にありますが、峠八幡宮の木はこれと比べても全く見劣りしません。オオツクバネガシとしては県内一の巨樹と言えます。


千代の松
【千代の松】
市指定天然記念物
●所在地:安佐北区可部一丁目21番
●指定年月日:昭和59年3月19日
●概要:クロマツ 樹高9m、根回り3.12m、胸高幹囲2.6m、枝張・東西17m 南北11m

   ひっきりなしに車の流れていく国道54号線沿いにあるこのクロマツは、樹高9mとあまり高くはありませんが、敷地内いっぱいに枝を張った姿は大変立派なものです。地上1mあたりから大きく東西に分かれた枝は、猿が大きく左右に手を開いたような形になっています。このような樹形を「猿猴づくり」と言い、その姿を保つためには、ひんばんに剪定を行ったり、長く伸びた枝が地面に接しないように石柱で支えたりするなど、常に行き届いた手入れを行うことが必要です。
   昔、太田川を利用した舟運が盛んだった頃、この地には船問屋の屋敷があったと言われ、当時このマツは「大下屋敷の松」という名で親しまれていたと言うことです。その後、大正時代に入って、当時の可部町長がこのマツを“可部八景”のひとつに選び、「千代の松」と歌に詠んで以来、この名で呼ばれるようになったと言われています。


イチョウ【友広神社のイチョウ】
市指定天然記念物
●所在地:安佐北区可部南1丁目14−18友広神社境内
●指定年月日:平成7年4月18日
●概要:雄株 樹高約25m 胸高幹囲415cm 枝張・東8.2m 西6.1m 南6.1m 北9.7m

   友広神社の社叢のなかでもひときわ群を抜いて高いのがイチョウ(雄)の木です。イチョウは、春には新緑が芽吹き、夏には美しい緑が木陰を落とし、秋には黄色い種子(ギンナン)を結び、冬には落葉した枝から木漏れ日が日溜まりをつくるというように、四季それぞれの変化をよく映し出します。むかしから神社や寺院、街路樹によく植えられてきたのも、人々によく親しまれてきたからなのでしょう。
   友広神社のイチョウは、太田川(西側)と根之谷川(東側)に囲まれ、南で三篠川を含めた3本の川が合流することから中島と言われるところにあり、昔から洪水の災害に数多く見舞われてきました。そのような厳しい自然条件のなかで、長年の風雪にも耐えて生き抜いてきた老木の姿は、我々に底知れない生命力の偉大さを教えてくれます。


☆ 広島市教育委員会の協力を得ました、ありがとうございました。☆

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