路上観察の心得 十カ条

- 路上観察の「あかさたな」-


路上観察って何?   
 路上観察は読んで字の如く、路上=屋外で「何か」を観察するもの。
 「何か」は何か?と言うと、思わずニヤッとするもの、参ったなー的
 な変なもの、なるほど!と感心するもの、あっはっは面白い!もの 
 などなど、自分の好きなものを観察していいのですが、あら探しや悪
 い所探しとは一線を画します。観察する側もされる側も楽しく気持ち
 良くならなくてはいけません。ただ観るだけで無く記録し、整理し、
 分析して、発表します。どっちが笑いをとるかの競争もします。  
物件の向こうに人を見る
 先ほどの「何か」の中には人を含めた動物、特に女性は含みません。
 動物は動くので、その時、その一瞬しかその場に居ません。写真で、
 どうだ!と自慢しても説得力が無いのです。したがって物件にこだわ
 るのですが、その物件は、実は人が、考えたり悩んだりしたあげくに
 できたもの。物件の向こうには作った人の思いが見えてくるのです。
トマソンって何なの? 
 路上観察の世界では「トマソン」という言葉がよく出てきます。昔、
 読売巨人軍にゲーリートマソンという腕っぷしの強い、バットをぶん
 ぶん振り回す助っ人がいて、この人は当たれば場外まで飛ぶんですが
 なかなか当たらなかった。ここから、無用の長物だがどこか憎めない
 物を「トマソン」と呼ぶようになったとさ。路上観察の世界では古典
 的な名品の、登って降りるだけの「純粋階段」がいまでも最高のトマ
 ソン物件だと思います。が、今や、トマソンを見つけるのが路上観察
 であるとは言いません。街を歩くとほかにもいろいろ面白いものが見
 つかって、トマソンだけでは説明できなくなっているからです。  

路上観察の「あかさたな」
 それでは路上観察を行う時の心得を「あ」から「わ」までの十カ条で
 お教えしましょう。                      

一、あ  路上観察は「遊びである」

 路上観察はあくまでも遊びです。遊びですが、とりあえず歩くので健  康にいい、それほど金がかからない、一人でも二人でもたくさんでも  できる、頭を使うのでボケ防止になる、町づくりの最初の動機付けに  最適である、自己表現の手段になる、いろいろな町を印象深く歩ける  等々メリットがたくさん有ります。特に遊びを知らない人には最適で  す。遊びが少なくなっている、遊びは悪い事だと思われている今の時  代、遊びを真面目に遊ぶことは実は大事なことだと思います。   

ニ、か  感覚磨いて観察せよ   

    ただ漫然と歩いていても何も見つかりません。かといって目を皿のよ  うにして歩くのは疲れます。言葉で説明するのは難しいのですが、或  る種の感覚、路上観察的感覚を磨いて、見るとは無く見るというのが  良い歩き方です。何のジャンルもそうですが感覚を磨く為にはたくさ  ん歩いて、たくさんの物件にふれる事が必要です。そうは言っても、  と言われる方には町のお顔探しがお勧め。これはとにかく顔に見える  ものを探す遊びですが初めての方でも絶対に見つかります!    

参、さ  撮影はアップで!    

    スケッチされる方もいらっしゃいますが記録の基本は写真です。カメ  ラは一眼レフで無くても、使い捨てカメラでも充分ですが、できるだ  け対象に近寄って、フレーム一杯に納めるつもりで撮って下さい。こ  れは何を撮ったんだろう?と首をひねるのは失格。説明の都合で周辺  状況を撮る時はもちろん引いて撮って下さい。写真を撮る時から発表  の仕方を考えるようになれば、貴方はもう一人前の路上観察者です。

四、た  人に「尋ねよ」     

    初めての町を歩く時の愉しみは地元の人と話をする事。歩いていると  これはどうしてだろうという疑問がわいてきます。そういう時は遠慮  なく質問しましょう。その町の基本的な事に気づかされたりします。  後から振り返ってもその町の印象が深くなりますよ。       

五、な  名前をつけてみよう   

    これは!と思える物件を見つけたら写真を撮って、名前をつけてみよ  う。名前をつけるという知的操作を加える事で面白さが増すのです。  名前を聞いたとたんに何故これが面白いのかが理解でき、笑ってしま  う事も有ります。その物件の印象も強くなりますし何処何処のあれ、  というより名前があった方が便利ですよね。例えば、「老人の主張」  「プッツン電柱」「タヒチの女」「鼻血」等々がありますが、どんな  物かわかりますか?                      

六、は  発表あって発見という  

    路上観察者の中にも「お宅」はいるんです。一人でアルバムを見て楽  しんでいるようですが、永年撮り続けた写真を一旦人に見せて感心さ  れたりすると、もう発表したくて堪らなくなります。これも喜びの一  つなんですね。学会の論文と一緒で、発表して始めてその物件が発見  されたという事ですから、機会をとらえて発表しましょう。私のメイ  ルに送って下されば、この場でも私の判断で掲載したいと思います。

七、ま  まとめて並べてシリーズ化

    長く歩いていると自分の興味の対象が絞られたりします。同じジャン  ルの物件を集めてシリーズ化して発表しましょう。シリーズ化して自  分のテーマであると認知されると、他の人からこんなのが在ったよ、  と情報が独りでに集まるようになります。これは便利。「町のお顔」  「スンマヘン看板」「頑張る木」「矢印看板」などのシリーズが在り  ます。                            

八、や  やらせと揶揄はペケマーク

    やらせをしてはいけないのはお判りですね。揶揄(やゆ)はからかう  という意味ですが、からかう気持ちで写真を撮ったり発表したりする  とその気持ちは相手に伝わり不幸な関係になります。気持ちの持ち方  だと思いますので気を付けましょう。              

九、ら  ラブは一番大切なもの  

    ラブ=愛は路上観察の世界でも一番大切なものだと思います。物件の  向こうに人を見るといいましたが、その人や行為はかっこいいものば  かりではありません。こうすれば簡単なのにとかどう見ても思い通り  にはなっていないよなというものの方が多いし面白いのです。路上観  察はそれを批難したりからかうのではなく、そんな人間の行為全部が  愛しいと思う心で観るものなんですね。             

十、わ  忘れ物は撮り戻せない  

    別の言葉でいうと「一期一会」。よく写真を撮るかどうか迷ったりす  る事があります。めったに来れない町ではいっそう迷いますが、こん  な時は撮らないといけません。近くの場所で後から撮ろうと思う事も  よくありますがほとんど実行されません。その時その場所での出合い  はその時に完結させましょう。忘れ物は撮り戻せない!      

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